京都はるの始まりまで

私の父は会社を経営していました。
家ではほとんど仕事の話をしない父でしたが、
ある時、私が高校生くらいのときでしょうか、お酒を飲みながら
「障がい者を雇うんだけど、来なくなっちゃうんだよなー」とつぶやきました。
なぜかその言葉が私の中に残りました。
私は子どもの頃から食べものや料理に興味があり
中学生くらいから新聞や雑誌で見るレシピを作ってみたり、
お菓子作り、おせち料理にも挑戦していました。
関東の小さな街に生まれましたが、
いつか世界中を旅したいと思っていました。
10代の終わりに初めて台湾に行き、現在まで15の国と地域、30以上の街を旅しました。
旅のいくつかは子どものためでもありました。
社会人になってからは食にはあまり関係のない仕事をずっとしていましたが、
外国などで出会った味に自分なりのアレンジを加えて作っていた
焼菓子をいつかみなさんに紹介したいと思っていました。
縁あって京都に数年前に引越して来て、
福祉作業所の作った品物やお菓子がたくさん置いてあるお店を見つけました。
福祉作業所が焼菓子を作って売っていることを最初に知ったのは、
いつのことだったのか思い出せませんが、
これまでも売店や道の駅などで見かけると、
買うことで応援できればと購入していました。
そして父のことを思い出していました。
自分も働き始めてようやく分かって来たことですが、
父の会社は、責任者の父がすべてに目を配らないと回らないような
中程度の企業だったので、
障がいのある方についての知識のない父に
それぞれの個性に寄り添った仕事をしてもらうことは
難しかったのではないだろうか、そして
私に何かもっと障がいのある方の力になることができたら良いな、
と思っていました。
そして京都府にこれだけ多くの焼菓子を作っている施設があるなら、
私が作りたいと思っていた焼菓子の製造を委託することで
少しでも工賃のアップにつながったり、
雇用の機会が増えたりということができないだろうかと思いました。
障がいのあるなしに関わらず
急に体調が悪化して休んだりすることはありうることです。
それは自社工房や製造工場と連携をすることでカバーし
注文に応じられる体制を作ればいいのではと思い、
そのお話をいくつかの福祉作業所でさせていただいたところ、
協力してくださるところが見つかりました。
こうしてようやく「はる」が船出をすることができました。
ところが・・・コロナウイルスのために
私が福祉作業所に材料を届けたり、出来上がった製品の
受け取りなどのために出向くということが、
できなくなりました。
自粛期間中に、いろいろなことを考えました。
でも、ここで思い出したことがありました。
もう一つ私が障がい者について考えることになった
きっかけがあったことを。
人は、辛い記憶は封印するといいますが、
まさに自分もそうでした。
自粛時間が思い出させてくれました。
私の母は、中途視覚障がい者でした。
私が学生のころに右の光を失い、
その後、左は割合長くそのままでしたが、
晩年はほぼ見えていなかったようです。
学生時代、自分の将来の夢や希望を考えたい時期に、
母の入院、手術、退院後の気持ちの落ち込みを真近で見つづけ、
サポートをしながら、その他の家事も母の代わりにしながら過ごした時間は、
今思い出しても辛かったです。
(リアルでお会いする皆さん、どうか
この時のことについては聞かないでください。
間違いなくその場で泣きます)
ウイルスの根絶までに何年かかるかわかりません。
今の、作業所と協力関係を作っていけない状況は受け入れるしかありません。
そのため、菓子製造業許可を取った工房のキッチンを活用し、
消毒を万全にし、
まずは自分で作って、皆さまに届けて行こうと思います。
また、職安に障がい者限定の求人を出し受理して頂きました。
様々な条件がお互い合致したら一緒に仕事をしたいと思います。
その途中で何か見えてくるもの、新たな出会いがありますように。
使う食材は、安心安全なものを厳選しています。
それは、私は小さい時から病弱で常に医者通いをしていたからです。
健康を取り戻したくて様々な健康法を探しましたが、たどり着いたのは、
毎日の食べ物を大事にすること、食材の質を重視することでした。
今は、様々な健康法が流行っては消える時代ですが、
私は動物性たんぱく質や質の良い油脂、そして糖質も、
とくに働き盛りの男性は適量摂ることが大切ではないかと思っています。
起業するにあたって様々な方に試食してもらったところ、
甘くないのに美味しい! 満足感がある
スパイスが効いていて後を引く味
砂糖が入っていないから罪悪感なしに食べられる
仕事中の小腹満たしにぴったり
ビールが飲みたくなる
お土産にもいい
などのお声をいただきました。
そして材料を吟味して健康を考えて作られていることから、
スナック菓子の代わりに子供のおやつにしたい、とか、
お仕事で車に長く乗るご主人のためにお弁当と一緒にもたせたい、など
家族の健康を預かる主婦のみなさんのご意見も多数頂戴いたしました。
材料を吟味して作らせていただいたおやつが皆さまの
楽しいひとときのお供になれることを祈って。